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2011年12月30日 (金)

希望なき世界を描く意欲作 「預言者ピッピ」

Pipi

 ピッピは、地震予知のために作られたロボット。彼が、すべてを計算し尽くしたとき、予言したのは人類滅亡の危機だった。

 COMIC CUEが「手塚治虫特集」だったので、手に取ったら、このマンガの第一回が載っていた。99年のことである。しかし、その後、雑誌の休刊などもあり、第1巻が出たのは2007年。書き下ろしを加えて2巻が出たのが2011年。続きがいつになるのか、全く見当が付かない作品だ。
 地震予知というモチーフは、時期的に阪神大震災を元に考えたものだろう。しかし、今日を予見したかのような問題をとりあげている。

 作中の世界では、ピッピが予知してくれるので、たとえ地震が起こっても、住民は完全に避難できる。
 人々は安全なところから、固唾を呑んで地震中継を見守る。それは壮大なショーとなって、無関係な観客を楽しませる。メディアを通すと災害や事件が見せ物化する、ということを本作は執拗に描写する。
 すべてを予知できるようになったピッピは、それを信じない真田に対して、99日後の自殺を予言する。その日に備えて、真田は檻に入り、前代未聞の自殺ショーが始まる。極めて悪趣味だが、その本質は見せ物化された災害と何も変わらない。

 人類の滅亡を避ける方法として、ピッピが提案するのは、人類が肉体を捨てて魂をデータ化すること。何やら〈人類補完計画〉のようだが、無邪気にヒーローショーを繰り広げているエヴァとは異なり、「火の鳥」を思い出させる思考実験へ突入しそうな気配だ。先行きがすべて分かってしまう世界で、人はどうすれば希望を持てるのか。これは極めて今日的な、そして現実の我々にとっても重要な問題提起と言えるのではないか。
 東北出身の地下沢が、震災の年にいきなり書き下ろしで続きを書き始めたというのは、何か新たな構想を得たからだと思いたい。続きの公開を期待して待つ。

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