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2016年4月21日 (木)

リップヴァンウィンクルの花嫁 その2

 私がブログでゲームや映画を記事にする場合、その素晴らしい作品を皆と共有したい、あるいはまだ知らない人に知ってほしい、と思ってとりあげている。
 だが、「リップヴァンウィンクルの花嫁」は別。非常に人を選ぶ内容のため、面白いよ、と迂闊に勧めることができない。また、どうしたことか、私のパーソナリティの奥深くに共鳴した作品でもあるため、他人に知られたくないという意識までもが生まれてしまった。

 以下に結末を含むネタバレがあるので注意!

●結婚式
 七海(黒木華)は、ネットで知り合った男性とあっさり付き合い、結婚する。その挙式の場面が映画とは思えなかった。ケーキ入刀、友人のスピーチ、余興、とお決まりの流れをこなしていくのだが、ちっともめでたい感じがなく、居心地の悪い空気が充満。両親へお礼の言葉を、わざわざ役者を雇って言わせ、新郎新婦の子供時代を演じさせるという茶番でその寒さはピークに達する。なんというリアルさ。まるで黒木華の親戚になって式に列席しているような気分だ

●浮気
 新婚の部屋に、男が押しかけてくる。あなたの夫は浮気している、相手は私の彼女だ、と男は訴える。それが本当らしいと知った七海の反応は「あちゃー」。夫のことがいかに他人事か、一瞬で露わになるのが凄い。

●代理出席
 夫の浮気も、それが元で男に襲われそうになったことも、逆に浮気を疑われ離婚になったことも、すべてはなんでも屋の安室(綾野剛)が仕組んだことだった。七海はそれに気づかない。
 すべてを失った七海に、安室は代理出席のバイトを依頼する。その場で、偽の家族を演じることになった七海は、彼らと楽しいひと時を過ごす。
 ここまでのすべてが虚構であり、七海を陥れる罠だったと言えるのだが、ひとたび七海が虚構を演じる側にまわると、忽然と幸せが顔をのぞかせる。なんというひねくれたファンタジーだろうか。

●豪邸のメイド
 七海への次の依頼は、豪邸でのメイド、しかも月給100万という現実離れしたものだった。屋敷はまともな生活の跡がなく、代理出席で知り合った真白(Cocco)が先輩メイドとして働いていた。主人も現れない謎の豪邸で、真白と二人きりの、世間と隔絶した生活が始まった。
 このような、全く現実味のない舞台においてのみ、本当の信頼関係が生まれるというあたり、この物語は悲観主義の最たるものと言えるかもしれない。

●裸焼酎
 真白が命を絶ち、安室と七海は真白の母親を訪れる。お悔みではない。安室は真白から、死の後始末を依頼されていたのだ。安室はビジネスライクに話を進め、残金を母に渡す。
 AV女優の真白と絶縁状態だった母は、やおら服を脱いで裸になる。娘のことはやっぱりわからない、と初めて涙を見せる。それを見た安室は号泣し、自分も服を脱いで酒を飲み始める。綾野剛のヌードが拝めるのはこの映画だけだ(笑)
 この場面、いつも冷静、計算づくの詐欺師である安室が、ついに善性を発揮したのだ、ととらえている人も多いようだが、果たしてそうだろうか。私は、号泣の直前、安室が吹き出しているのを見逃さなかった。母が服を脱ぐ意味不明さに笑ってしまったが、それは仕事では見せてはいけない裏であり真実だ。だから、ごまかすために安室は大げさに号泣してみせたのだと思う。
 真白が死んだとき、安室は計画通り七海も道連れになったと思い込み、その場でドライに仕事の話をしていたが、七海が起きたのを見て取り乱した。状況としてはそれと同じようなものだったのだろう。

●指輪
 計算外のことに振り回されたせいだろうか、別れの場面での安室は、すっかり毒気が抜けていたように見えた。
 七海は、新しい部屋の窓辺に立ち、空に手をかざす。かつて、真白との結婚式ごっこで、二人は指輪を交換するふりをした。それがまだ手にはまっているということなのだ。見えない指輪を見ている、「リップヴァンウィンクルの花嫁」は、どこか希望に満ちて美しかった。

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