映画一刀両断 Feed

2016年5月15日 (日)

マジカル・ガール

「覚えておきなさい。完全な真実というのは常に答えが同じであり、つまり2+2は4なのだ」

 女学生が、授業中にメモを回している。数学の教師はそれをとがめ、メモを見せるように命じるが、女学生が手を開くと、メモはそこになかった。
 スペイン映画でありながら、まるで日本の学校のような場面から始まる「マジカル・ガール」。予測不能のこの物語は、冒頭のメモが暗示するように、そこにないものが鍵となる。

注意:以下に結末までのネタバレを含む

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2016年5月 3日 (火)

僕だけがいない街

 いや~、公開終わっちゃったわ~、見損ねたわ~、リバイバルしたいわ~。…というオチを考えていたのですが、観に行ってしまいました、実写版「僕だけがいない街」。

 まず誉めておきたいのが、タイミングの良さ。マンガ原作の映画は色々ありますが、例えば「寄生獣」の場合、原作が完結しているので安心感がある反面、なんで今さら映画に、という古さがあります。一方、「進撃の巨人」だと、題材は旬なのですが、そもそも連載途中なので、独自の結末を必要とするのが難点です。
 これらに比べると、「僕だけがいない街」は、マンガの完結、アニメの最終回、映画の公開のすべてがほぼ同時となっており、タイアップ効果は上々。よくタイミングを合わせたものだ、と感心します。

 以下、多少のネタバレを含むため注意

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2016年4月21日 (木)

リップヴァンウィンクルの花嫁 その2

 私がブログでゲームや映画を記事にする場合、その素晴らしい作品を皆と共有したい、あるいはまだ知らない人に知ってほしい、と思ってとりあげている。
 だが、「リップヴァンウィンクルの花嫁」は別。非常に人を選ぶ内容のため、面白いよ、と迂闊に勧めることができない。また、どうしたことか、私のパーソナリティの奥深くに共鳴した作品でもあるため、他人に知られたくないという意識までもが生まれてしまった。

 以下に結末を含むネタバレがあるので注意!

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2016年4月 9日 (土)

リップヴァンウィンクルの花嫁 その1

 全国の映画賞関係者の皆さん、黒木華に主演女優賞を!

 「リップヴァンウィンクルの花嫁」、観るのにこれほどハードルの高かった映画も珍しい。
 まず第一に、岩井俊二監督作品であること。その作風にあまりいい印象を持っていなかった私が、なぜわざわざこの映画を観に行ったのかというと、やはり一昨年のドラマ「なぞの転校生」が良かったことが大きい。
 第二に、事前情報の少なさ。ネタバレを避けるどころではない。そもそも公式サイトにストーリーが載っていないのだ。あるいは、事前に原作小説を読むのが当たり前、ということなのだろうか。
 第三に、長さ。上映時間が3時間に及ぶので覚悟がいる。
 第四に、上映館の少なさ。大阪という都市圏にしてわずか2館のみの公開。さらに当日、大阪駅周辺が工事中で、いつもの道が塞がっているというおまけつき。
 いや~、観るまででもう大変だった。これで映画がハズレだったら目も当てられない。

 ありがたいことに観る価値があった。面白いとかつまらないとかいう尺度を飛び越えて、すごいものに遭遇してしまった、と感じた。
 黒木華、主体性がなく翻弄される主人公を見事に演じた。ヒロインっぽい見た目の女優にはこの役はつとまらない。綾野剛、変幻自在の詐欺師がこれ以上ないはまりっぷり。今後はCMで見ても一切信用しない。脇役もことごとく味を出しており、紀里谷和明の扱いのひどさは特に良かった。
 物語も、現代社会の暗部を切り取って見せる前半から、力技でファンタジーに持ち込む後半まで、油断ならない変化球をばんばん投げ込んでくる。大きな事件もアクションも一切ないが、主人公とともに人生の大嵐に投げ込まれる大作だ。

黒木華演技力 10
綾野剛演技力 10
万人受け度  1
個人的総合 8

2016年3月29日 (火)

オデッセイ

 マット・デイモンが宇宙に置き去りにされ、それでも希望を失わないのが「オデッセイ」。暗黒面に堕ちるのが「インターステラー」。などという冗談はさておき。

 火星を舞台にした難易度最大級のサバイバル、そして救出劇となっているこの映画。もしも日本で作られたなら、全編登場人物の眉間にしわが寄っているような、深刻さあふれるストーリーになるであろうことは想像に難くない。ところが、本作のトーンの明るいこと。違う角度で、アメリカ人の最強ぶりを見せられた感じだ。
 さて、宇宙を舞台にしたSFというと、未知の世界ゆえに神秘的な方向に話が行きがちである。例えば、「インターステラー」では舞台が四次元世界に到達してしまった。また、「ゼロ・グラビティ」は、現実味を重視した作品であったが、それでも霊的、宗教的な描写が一部にあった。
 一方、「オデッセイ」はというと、火星探索が行われている近未来、という設定ではあるが、その技術は現在から想像しうる程度のもの。サバイバルも救出も、現実味のある工夫のもとで行われる。謎の宇宙生物など出てこないし、神秘も奇跡も一切起こらない。他の作品が、宇宙に比べて人間などちっぽけで非力なもの、という方向にまとめがちなのに対し、宇宙にもへこたれない人間の強さをアピールするこの映画は、SFとしては独特のポジションにあると思う。
 せっかく楽しい中身なのに、邦題が重厚過ぎて損をしているのが惜しい。

不屈度 10
性善説度 10
DASH村度 8
個人的総合 7

2016年2月28日 (日)

スター・ウォーズ/フォースの覚醒 その2

 思いつくままにあれこれと。

●レイの食糧事情
 スター・ウォーズの楽しさと言えば、世界観を表現する数々のガジェット。乗り物とか宇宙人とか動物などです。今回はBB-8がその代表となるのでしょうが、私の目をくぎ付けにしたのは未来のパンでした。
 水でかき混ぜたらメロンパンみたいなのが出来るの。何あれ欲しい。レイの貧しさを表現する場面なので、まずそうな色ではあったけど、面白すぎます。

以下は、ネタバレや続編の推測を含むため注意

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2016年2月20日 (土)

スター・ウォーズ/フォースの覚醒 その1

 遅ればせながら、ようやく覚醒してまいりました。いやもう天晴。伝説的なシリーズの続編ということで、あれもこれもできないというガチガチな制約の中、よくぞここまでやりきりました。

 その作りこみは、開始数分で、あ、これ、よく出来た奴だ、とわかるほどなのです。
 例えば、新主人公、レイの登場シーンを見てみましょう。
 登場するのは、マスクとフードで顔を隠したジャンク・ハンター。アクロバティックな身のこなしで、ガラクタを回収していきます。かっこいいな、と思っているとマスクをはずします。あ、女だ、とびっくりするのです。
 レイは、宇宙船の装甲らしきガラクタを、そり代わりにして荷物を運びます。砂丘を降りたらどうするんだろう、と思っていると乗り物が止まっており、謎のテクノロジーで空中に浮かんでいます。SFだということを印象付ける一瞬です。
 レイはこの乗り物を駆り、砂漠を駆け抜けます。広くて何もない、ただの砂漠だなあ、と思ったころに、背景に巨大な宇宙船の残骸が現れ、否応なく世界観を叩きこまれます。
 たったこれだけの間でも、計算された演出により、観客の心はあっちへこっちへ、自在に翻弄されるのです。以降も万事がこの調子で、見事としか言いようがありません。

 作為のない画面で心情の機微を伝えるタイプの映画を、自然公園に例えるならば、この映画の作為の塊のような完成度の高さは、完全にディズニーランドのそれです。おっと、スター・ウォーズは今作からディズニー配給なのでした。なるほど納得です。

2016年2月 8日 (月)

きみはいい子

 子ども、母親、老人が抱える身近な問題を、見事なリアリティで切り取って見せる群像劇。
 私自身が教職に就いていることもあって、やはり一番気になったのは、新米教師の物語だ。岡野(高良健吾)は、大して熱意も持っていない小学校教師。トラブル対応もクラス運営もちっともうまくいかない。この、制御不能になるクラスの騒ぎっぷりが生々しいのだが(笑)、岡野が疲れ果てて帰ると、幼い甥っ子が小さな体で岡野を抱きしめてなぐさめる。
 それを受けて岡野は、クラスに対し「家族の誰かに抱きしめてもらってくること」という宿題を課す。子どもたちは驚き、騒然となる。
 翌日、岡野は宿題をやってきたか尋ね、そのときの感想を個々に聞いて回る。この部分の演出が非常に印象的だった。子供たちの感想は極めて率直で自然であり、まるで岡野がインタビュアーを担当するドキュメンタリー番組のようだった。もしかすると、宿題は本当に行われ、そのやりとりがそのままカメラに収められたのではないか。
 パンフレットを買って、疑問はさらにふくらんだ。シナリオが載っている。しかも一部ではなく、全部である。こんなパンフレットは他で見たことがない。宿題をめぐるやりとりも当然収録されており、そこには、しっかりとセリフが記載されていた。あの自然な言葉が脚本家によるものだとしたら、恐るべき感性だ。いやそれとも、アドリブで出た言葉を、最終的なシナリオとして書き留めたのか。どちらかは私にはわからない。
 映画の結末、岡野のノックが現状を好転させたのかどうかは、想像に任される。それ以外にもさまざまな余白があって、私たち観客の日常と地続きになり、問いかける作品であると感じた。日常を忘れるための娯楽とは、対極にある一本だ。

キャスティング 9
身近さ 9
余韻 9
個人的総合 7

2016年1月31日 (日)

あん

 題名は、人名ではなく〈餡〉のこと。
 千太郎(永瀬正敏)は、小さなどらやき屋を営んでいる。そこへ徳江(樹木希林)が、バイトしたいと現れた。その歳では無理、と断る千太郎に、徳江は自作の餡を押し付ける。餡は確かに絶品で、千太郎は徳江をやとうのだった。
 餡作りの過程が丁寧に描写されるが、グルメ映画ではない。店が繁盛するまでを描いたサクセスストーリーでもない。小さな日常の中に人生が凝縮されている、作中の餡のように滋味あふれる佳作なのである。何に感動したのか説明するのが難しい、という点で「マイマイ新子と千年の魔法」にもどこか通じるところがある。そして新子と同様、観客からの支持が根強く、アンコール上映が決まった。以下は公式からの引用。

<全国のイオンシネマで アンコール上映です!!>

やはりこの「あん」」は映画館の暗闇と静寂の中で観ていただきたいです。
千太郎と徳江のつぶやくようなセリフ、木々や風の声、そして餡子のささやきを感じられる場所だからです。

大きなスクリーンでは、ラストチャンスかもしれません。
全国のイオンシネマ約80館で2月に一斉に公開されます!

 映画館の長所として、大スクリーンと大音響は誰もが認めるところだが、なるほど、暗く静かという環境も作品によっては大事だ。将来に不安を持つ人や、ここまでの人生に後悔がある人に、ぜひ観てほしい映画だ。

風景美 8
演技力 10
渋み 10
個人的総合 8

他の方の注目すべき「あん」評
忍之閻魔帳 …どこぞの映画賞よりよほど見る目があります
映画@見取り八段 …こういう言語化ができる人になりたいわ

2016年1月23日 (土)

最近の映画館は飲食物持ち込み禁止らしいですが

映画館に飲食物を持ち込むのは非常識だ!そのせいで映画館がどんどん閉館してる・・・
 映画館での飲食物持ち込み禁止ルールについて、何やら熱い議論が繰り広げられていますが、ここで、パルシネマの案内をご覧ください。

当館の楽しみ方
●館内で飲み物、お菓子などは販売しております。
飲食物の持ち込みは可能ですが、本編開始後のビニール袋の音など回りの方のご迷惑になりますのでお控えください。
 場合によってはスタッフから声をかけさせていただきます。
●朝から2本ご覧になる方はあらかじめ昼食を持参されることをお勧めしております。

 パルシネマは、神戸新開地の名画座で、席指定なしの二本立て上映。
 コーラやポップコーンを販売するスペースがなく、飲食物の持ち込みが大前提となっています。お昼の休憩時間には、慣れたお客さんたちが、おにぎりやお弁当をとり出して食べています。
 驚いたことに、二本を続けて観なければいけない規則はなく、途中で外出してもいいのですね。そこまで自由とは知りませんでした。
 私にとっては天国としか言いようがありませんが、昔は映画館ってだいたいこんな感じだったらしいですね。それでも問題なかったのは、今と違って映画が充分な収益を上げていたということなんでしょうか。

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